第 3417 号2014.07.20
「 夏の思い出 」
久川 真弓(ペンネーム)
蝉が鳴いている
この季節になると思い出す、思い出がある。
初めて彼女がいる人を好きになった。
好きになったところでどうしようもない、頭ではそんなこと解っている。
だけど自分の気持ちは抑えられなかった。
少しでも私があなたの記憶に残るように、
会う約束をたくさん取り付け、会った時は笑顔を絶やさず、
笑ってくれるような話題を探し、
私と一緒にいて「楽しい」と思ってもらえるよう努めた。
1分1秒でも長く、あなたと一緒に居たかった。
どんなに忙しくても、どんなに疲れていても、
私の中で彼との約束はどんな約束よりも最優先だった。
でも彼の最優先は彼女だった。
それは当然のことだろう。
だけど自分のしていることは、あなたにはまったく意味を持たないと思うと、なんともやりきれない気持ちになり、ふと涙がこぼれることもしばしばあった。
「私は一体何をやっているんだろう」
そう思いつつも、好きになった気持ちは簡単には消えてはくれない。
「じゃあ今日からあなたのことは忘れます」そんなこと出来ない。
どこまでもしぶとく、私の気持ちをかき乱す。
どうやったら人を好きになるか、なんて分からないし。
どうやったら人を忘れられるか、なんてもっと分からない。
ただ、「時」が来るのをひたすら待つしかないのだろう。
あなたに出会って3回目のこの季節がきた。未だにその「時」が来ない。
今年こそは、蝉が鳴かなくなる頃までにはその「時」が来てほしいと願うばかり。