第 3710 号2020.03.01
「森ハチミツ」
森 まりも(ペンネーム)
我が家の換気扇が日本ミツバチに占領された。
穏やかな春の日。換気扇からブンブン音がする。時々小さなハチ が換気扇から飛び出してくる。 ネットで検索してみる。「日本ミツバチ…大変おとなしく人を 刺すことはめったにありません。よって巣を見つけても除去せ ずそっと見守ってあげましょう。」 牧歌的な文言にほのぼのとしている場合ではない。即刻市役所に 電話する。 「数日の勝負です。働きバチが偵察に来ているのです。女王バチ が来たらもうダメです。」「どうなります?」「換気扇がハチミツ だらけになります。業者を呼ぶしかありません。」 24時間換気扇を回し続け、線香の煙を吸わせ出ていってもらうこと にした。それにしても…。 「この辺は元々山でしたら。野生の本能がまだ彼らに残っている んでしょうね。家の外壁がマスタード色なんですか?一番好まれ る色ですよ。巣が作りたくなる条件が揃っているんです。」 翌日、何とか彼らに出て行ってもらうことに成功した。 貴重な日本ミツバチ。我が家には空家状態の鳥の巣箱があるのに。 換気扇ではなくこちらに巣を作ればもっと優しくしてあげられたのに。 「そしたら森ハチミツって名前で高く売れたかもね。何せ国産だしね。」 ヨコシマなもくろみにはさすがにハチも応じてくれないらしい。