第 3422 号2014.08.24
「 木漏れ陽の中で 」
桜 猫(ペンネーム)
少し早く駅に着いたワタシは
君が来るのをどきどきしながら待っていた
たくさんの人ごみに君の笑顔を見つけた時には
胸の鼓動がますます高鳴っていた
はじめて君と二人で出かけたあの日
夏の終わりの夕立の後
アスファルトから立ちのぼる
すがすがしい匂い
田園調布の銀杏並木は
夏の終わりの蝉の声でいっぱいだった
時折吹く涼風に
銀杏並木の木々の葉から小さなしずくが頬に落ち
ふと見上げれば
木漏れ陽がきらきら光り
雲が流れる青空がきれいだった
シ・ア・ワ・セ!
どんなことを話したのか
どんな言葉を返したのか
せっかく話しかけてくれる君に
恥ずかしくて上手に話すこともできなかった
大好きなのに・・・
間もなくして
突然の事故で君は逝ってしまった
自分の気持ちを素直に伝えられなかった後悔
今だったら自分の気持ちを素直に伝えることができるのに・・・
あれからワタシは君の何倍も生きてきました
繰り返される季節の中で
君の限られた記憶がふっとよみがえる
そんな時
あの曲り角から君が現れるのではないかと思う
木漏れ陽の光と風をほほに受け
あの時の記憶をたどり
ワタシはそっと目をとじる