第 3404 号2014.04.20
「 鳩の巣篭もり 」
山根信正(所沢市)
この土地に住んで30年になる。
移り住んだ当時猫の額のような庭先に花水木の低木が植えられていたが、30年という歳月を経て、今は青々と繁り周囲の鉢植の花たちに涼しい日陰を提供してくれている。
先日花水木を見上げると一羽の鳩が小枝を拾い集めてきて、巣作りを始めているのを発見した。
まだ番の姿は目撃してないし、昼間は殆ど巣を留守にして働きに出掛けているようで、仲良く巣作りを始めているわけではない。
最近はパートナーを呼んでいるものと思われる「ホーホーッホッホー」という鳴声が聞こえたり、鳩を追いかけるカラスの喧しい鳴声があったりで、随分周囲が騒々しくなっている。
花水木の幹はさほど太くないし不安定な状態の中で風に抗い、雨露を忍んで立派な巣が作られることを願っており、まもなく雛のさえずりが聞こえてくる日を心待ちにしている。良く鴛鴦夫婦という言葉が使われるが、鳥の場合鴛鴦も含めて雛が育つまでは一緒にいるが、巣立ってしまえばそれっきりという鳥が殆どである。
しかしハヤブサ。ハゲタカ・コンドル等は相手が死んだりする以外は同じ相手と過ごすし、鳩も生涯を共にすることの多い仲の良い鳥のようである。
子育てが終わると熟年離婚する夫婦が多く、また家族の崩壊を窺わせる事件が多発している今の世の中にあって、年老いた夫婦で残された時間をどのように過ごしてゆくかを考えながら穏やかに鳩の巣篭もりをじっくり観察して見守ってゆきたいと思う。