第 3241 号2011.03.06
「 一本のミサンガ 」
モンブラン(匿名)
W杯の余韻が残る昨日、次男がJリーグの開幕戦に出掛けた。
お気に入りの選手が来季から海外に移籍してしまう為、彼のプレーを目に焼き付けたかったようだ。
ご機嫌で帰宅した次男は照れくさそうに「兄ちゃん、これ。そのうちに手に入らなくなるぞ。」と長男にその選手の携帯ストラップを渡した。
その光景は、私に数年前のある出来事を思い出させた。
今は大学生になった長男が小学校5年生の時だったと思う。当時、入手困難なトヨタカップの決勝戦のチケットを友達のお父さんが取って下さり、長男を連れて行きたいと打診があった。
私は厳しい母親で、子供たちを平等に育てたいと思っていたので、長男だけが楽しい思いをするのはどうも腑に落ちなかった。
しかし、ご好意を無にするのも違う気がし、自分のお小遣いでチケットを買うなら行ってもいいと条件をつけて了解した。
世界の一流選手のプレーを堪能したその夜、長男は一本のミサンガを持って帰宅した。
一本?喧嘩になるのに、と訝る私に「これ弟に。手持ちが少なくてこれくらいしか買えなかったんだ。」と長男は申し訳なさそうに言った。
ミサンガは弟へのお土産で、自分だけ楽しんでは悪いと思って買ってきてくれたんだ!何て兄弟想いなんだろう!それに比べて私ときたら・・・。
私は長男が愛おしく、ぎゅっと抱きしめた。
昨日、次男も長男に同じ様な思いやりを見せてくれた。
「心根の優しい子供達に育ってくれて、ありがとう。」
子供の成長に喜びの涙が溢れた夜だった。