第 3420 号2014.08.10
「 8月の青い空 」
岩本 まり子(板橋区)
以前から8月の青い空について書きたいと思っていました。
もう二年前になります。地下鉄に乗っていた時のこと。隣に座っていらしたおばあさん。とてもお元気そうでした。コロコロとひっぱる小さ目のスーツケースを前に置いていました。何がきっかけだったのか思い出せないのですが、私とおしゃべりになりました。
「これから、白内障の手術のために入院するんですよ。片方はもう終わったんですけれどもう片方をね…」
「まあ、それは大変でいらっしゃいますね。で、片方が終わってよく見えるようになられました?」
「あなた、それはもうびっくりする位よく見えるのよ。みなさん、手術後の感想を(こんなにしわだらけだったなんて…)とか、(遠くの景色がはっきり見えて…)とかおっしゃるけれど、私が何を思ったか、おわかりになる?」
「69才の時に白内障の手術をした私の母も(しわだらけの顔に驚いた!)と言っていました。何を思われたのですか?」
「あの日の青い空よ。私はその時女学校の一年生でね。あの「8月15日は、芝(港区)にあった家にんたのね。そしてほとんど聞きとれない玉音放送を聞いたのよ。」
『戦争が終わったらしい…』
「そのあと、庭に出て見上げたら、ぬけるような青い空。私が白内障の手術が終わって初めて見た景色が、あの日と全く同じ色の青い空だったんですよ。」
お若く見えたけど、80才を過ぎていらっしゃるとのことでした。
どうぞお元気で長生きされて、これからも平和な青い空をごらんなれますように、と思った私です。