第 3415 号2014.07.06
「 かたづけもの 」
金城 真喜子(世田谷区)
ひさしぶりに開けた引き出しの中に
青春の踊り場を見つける
スタビロの色鉛筆
ささやかな賞の記念品だった
そばにいた男の子が
「溶かして使ったりするんだよ」と
先輩顔でささやいた
真新しい製図用具
透明な雲形定規
赤いスポンジのベッドで切れ味するどく輝いていた
なにを創ろうとしていたんだっけ
細くて、美しい線を描きたかったあの日
登るはずだった夢の階段に
足をふみだすこともなく
いくつも夢の踊り場があったことを
残された道具が私の手の上で語りかけていた