第 3291 号2012.02.19
「 母と水仙 」
Y子(ペンネーム)
新宿は私が生まれた場所
母が幼い私を連れて、たびたび訪れたという新宿御苑
五十年以上経って、暖かい日差しの中を散策している
「覚えているかい」って、母から訪ねられても、
何も覚えていない自分がお粗末で
申し訳なくて、いつか行きたいと思っていた
広い芝生を見渡し、日本庭園や白樺並木を通り抜けて行く
何も思い出せない
若い母親が可愛い幼子を乗せて乳母車をゆったりと押している
こんなに素敵な場所で大事に育ててくれたんだね
それなのに
時間を浪費して、失敗ばかりの人生
親不幸な娘
広場を無邪気に幼子達が走り回っている
私もあのように元気な子供だったのか
そして
母は私を暖かく見守っていたんだね
今
母と一緒に
散歩しているという確信に包まれる
ありがとう
日だまりに咲いた水仙が教えてくれた
ここがあなたの原点なんだよ
そうなんだ
ここが私のふる里
母と会える場所
青空に目を移すと、母子を照らす太陽光が、私の足元に届いていた