「 思い出に浸る時間 」
るみ(ペンネーム)
私は、懐かしがり屋である。ふとした時に、ある事柄をきっかけんして、あぁ、そう言えばこんな事があったとか、あの場所はこうだったなぁと、その時の自分に戻るかのようにして、色々思いを巡らすのだ。その上、そのように思い浮かべている時間は、とても楽しいひとときである。
こんな事を書いていると、まるで私は、だいぶ年を重ねていると思われるかもしれないが、私は今、25歳。この歳でも、やはり懐かしむ物事は多々あるし、私が思う所、懐かしむ物が、割と多いからではないだろうか。というのも、小さい頃から、親の仕事の都合で、各地に住んでいたためだ。
だから例えば、小説で「阪急電車に乗り、梅田に向かう」という節を読むと、しばらく本を閉じ、阪急電車のソファの色、大阪の梅田の賑やかな人通りの様子が、ふつふつと脳裏に浮かんでくる。そして、また小説のページをめくり、そうそうこうだったと作者の描写に妙に納得して、その小説の中で繰り広げられた物に、ぐんと親近感を寄せる。またテレビで、讃岐うどんの特集を見ると、自分が香川に住み、美味しくてコシのあるうどんをよく食べた事、暖かかった気候、幼かった自分が流暢に四国弁を話していた事を思いす。そして春になれば、新潟の小学校で見事に咲いていた桜の木が浮かんでくる。その大きな桜の木の周りを、休み時間思い切り駆け回った事や、毎年、桜祭り集会をして、外でお弁当を楽しく食べた事まで思い出され、穏やかな気持ちになる。
今も、あの大きな8本の桜は、鮮やかに咲き、皆の目を楽しませているのだろうか、と思うのだ。
一つの事が、私の中にある物に響き、どんどん広がっていく。様々な出会いを経て、もう過ぎた物、遠く離れてしまった物は、今手に届かない分、心の片隅で強く色彩を放っている。これから先も、良き思い出が増える様、一日一日を大切に過ごしていきたい。